はじめに
株式投資を始めたばかりの人がよくぶつかる壁のひとつに、「株価が高いとか安いって、どう判断すればいいの?」という疑問があります。
例えば、トヨタの株価が3000円で、ある中小企業の株価が500円だったとします。このとき「トヨタの株は高い、中小企業の株は安い」と単純に思ってしまいがちです。
しかし実際には、株価が高いか安いかは金額そのものでは判断できません。会社の規模や利益、資産、配当などと照らし合わせて「割安か割高か」を見る必要があります。
その判断の手助けをしてくれるのが「株価指標」です。
中でも初心者がまず押さえておくべき代表的な指標が、
- PER(株価収益率)
- PBR(株価純資産倍率)
- 配当利回り
の3つです。この記事では、それぞれの意味や計算方法、活用の仕方、そして注意点までをやさしく解説します。
PER(株価収益率):利益とのバランスを見る
PERの計算式
PERは「株価が利益の何倍で評価されているか」を示す指標です。計算式は次の通りです。
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)
例えば株価1500円で、EPS(1株あたりの利益)が100円なら、
1500 ÷ 100 = PER15倍 となります。
PERが意味するもの
PER15倍ということは、その会社が1株あたり100円の利益を毎年出し続けると仮定した場合、株を買った人は15年で投資額を回収できる、というイメージです。
一般的には、
- PERが高い → 将来の成長期待が大きい or 株価が割高
- PERが低い → 株価が割安 or 成長性が乏しい
と解釈されます。
業種ごとのPER水準
ただしPERの「高い・低い」の基準は業種ごとに異なります。
- IT・成長株:30倍以上でも珍しくない
- 製造業・成熟株:10倍前後が目安
- 景気敏感株(海運・鉄鋼など):業績に波があり、PERが大きく変動する
つまり、同じ「PER20倍」でも業種によって意味が全く違う点には注意が必要です。
PBR(株価純資産倍率):資産との比較を見る
PBRの計算式
PBRは「株価が会社の資産価値と比べて何倍で評価されているか」を示す指標です。計算式は次の通りです。
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)
例えば株価1000円で、BPS(1株あたり純資産)が1200円なら、
1000 ÷ 1200 = PBR0.83倍 となります。
PBRの見方
PBR1倍が基準になります。
- PBR1倍以下 → 資産価値より株価が安い(割安と判断されやすい)
- PBR1倍以上 → 資産価値より高く評価されている
PBR0.7倍なら「もし会社を解散して資産を清算したら、株価以上の価値がある」という計算になります。
注意点
ただし、PBRが低いからといって必ずしも「お買い得」とは限りません。市場が「この会社には成長性がない」と判断している場合、株価は長期間低迷したままのこともあります。
逆に、資産が少なくても高成長が期待されるベンチャー企業は、PBR10倍以上になることもあります。
配当利回り:株主への還元を見る
配当利回りの計算式
配当利回りは「投資額に対して毎年どれくらいの配当金が得られるか」を示す指標です。
配当利回り(%) = 年間配当 ÷ 株価 × 100
例)株価1000円で年間配当が30円なら、
30 ÷ 1000 × 100 = 3%
配当利回りの意味
配当利回りが高いほど、安定して現金収入を得られる可能性が高いということになります。
銀行預金の金利が0.001%程度しかない現在、3%の配当利回りは非常に魅力的に映ります。
注意点
ただし、高配当株には「業績悪化で減配・無配になるリスク」があります。
また、株価が下がった結果として配当利回りが見かけ上高くなる場合もあるため、「高配当=安全」とは限りません。
指標を使うときのポイント
1. 1つの指標だけで判断しない
PERが低いから即買い、配当利回りが高いから安心、と考えるのは危険です。3つの指標をバランスよく見て、総合的に判断することが大切です。
2. 業種ごとの水準を理解する
PERやPBRは業種ごとに適正水準が違います。同業他社と比較することで、より正しい判断ができます。
3. 長期投資と短期投資で使い方が変わる
長期投資なら「配当利回り」を重視するのも有効ですし、短期投資なら「PERの変化」や「決算での修正」に注目するのが効果的です。
まとめ
- PERは「株価が利益の何倍か」を示し、割高・割安の判断材料になる
- PBRは「株価が資産価値と比べてどの水準か」を示す
- 配当利回りは「投資額に対する株主還元率」を表す
- 3つを組み合わせて見ることで、株価が本当に割安なのかどうかを冷静に判断できる
株式投資は「ギャンブル」と思われがちですが、こうした指標を理解して使うことで、論理的に判断できるようになります。初心者はまず、この3つの指標をニュースや証券会社の画面で確認しながら、「この会社は割高か、割安か、利回りはどうか」と考えるクセをつけることが第一歩です。


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